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東京地方裁判所 平成6年(行ウ)77号 判決

原告

甲野一郎(仮名)(X1)

乙山花子(仮名)(X2)

右両名訴訟代理人弁護士

中村誠

被告

品川区教育委員会事務局 学校教育部長(Y) 岡田康夫

右訴訟代理人弁護士

近藤善孝

右指定代理人

菊池研一

齋藤修一

堀池浩行

主文

一  被告が原告乙山花子に対し平成四年七月三〇日付けでした「八潮北小学校女性教師事件の校長報告書」の公文書非公開決定を取り消す。

二  原告乙山花子のその余の請求及び原告甲野太郎の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用中、原告乙山花子と被告との間に生じたものはこれを二分し、その一を被告の負担とし、その余は原告乙山花子の負担とし、原告甲野太郎と被告との間に生じたものは原告甲野太郎の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告甲野太郎に対し平成四年六月二九日付けでした「八潮北小学校女性教師による事件(校長報告書)」の公文書非公開決定及び同年七月七日付けでした「八潮北小学校女性教師事件若月調書」の公文書非公開決定をいずれも取り消す。

2  被告が原告乙山花子に対し平成四年七月三〇日付けでした「八潮北小学校女性教師事件の校長報告書」の公文書非公開決定及び同年八月一八日付けでした「八潮北小学校保護者と若月指導主事との会議録」の公文書非公開決定をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1(一)  原告甲野太郎(以下「原告甲野」という。)は、被告に対し、品川区情報公開条例(以下「条例」という。)五条に基づき、平成四年六月一七日、公文書である「八潮北小学校女性教師による事件(校長報告書)」(以下「本件報告書」という。)の公開を、同年七月一日、公文書である「八潮北小学校女性教師事件若月調書」(以下「本件調書」という。なお、本件報告書と本件調書を一括して「本件文書」という。)の公開を、それぞれ請求した。

(二)  これに対し、被告は、本件報告書の公開請求については平成四年六月二九日、本件調書の公開請求については同年七月七日、いずれも個人に関する情報で特定の個人が識別されるため条例七条一号に該当するとして、これらを公開しない旨の決定をした。

2(一)  原告乙山花子(以下「原告乙山」という。)は、被告に対し、条例五条に基づき、平成四年七月七日、「八潮北小学校女性教師事件の校長報告書」(本件報告書のことである。)の公開を、同年八月三日、「八潮北小学校保護者と若月指導主事との会議録」(本件調書のことである。)の公開を、それぞれ請求した。

(二)  これに対し、被告は、本件報告書の公開請求については平成四年七月三〇日、本件調書の公開請求については同年八月一八日、いずれも条例七条一号及び同条三号ア(区政執行に関する情報で、公開することにより区政の公正又は適正な執行を著しく妨げるおそれのあるもの)に該当するとして、これらを公開しない旨の決定をした。

3  原告らは右1(二)及び2(二)の公文書非公開決定(以下、一括して「本件決定」という。)を不服として品川区教育委員会教育長(以下「教育長」という。)に対し、それぞれ審査請求をしたが、教育長は、平成五年一二月八日、各審査請求をいずれも棄却する裁決をした。

4  しかしながら、本件決定は、いずれも条例七条一号、三号アの解釈適用を誤った違法なものである。

よって、原告らは、それぞれの公開請求に対する各公文書非公開決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の事実は認めるが、同4は争う。

三  被告の主張

1  条例七条は、「次の各号のいずれかに該当する情報が記録されていることにより、公開できない合理的な理由がある場合には、公文書の公開をしないことができる」と規定し、同条一号には、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で、特定の個人が識別され、または識別され得るもの」(以下「個人識別情報」という。)が、同条三号アには、区政執行に関する情報であって、「入札の予定価格、試験問題、人事記録、争訟または交渉の方針その他実施機関が行う事務事業に関する情報で、公開することにより区政の公正または適正な執行を著しく妨げるおそれのあるもの」(以下「区政執行情報」という。)が、それぞれ定められている。

2  本件報告書について

(一) 本件報告書は、平成四年六月二三日付けで、品川区立八潮北小学校長(以下「校長」という。)から教育長に対して提出された「体罰ではないかとの母親の訴えについて」と題する報告書であり、右小学校(以下「八潮北小学校」という。)に在学する児童(原告乙山の子。以下「本件児童」という。)が担任教師(以下「本件教諭」という。)から体罰を受けた旨の保護者(原告乙山)からの訴えを受けて(以下、右訴えに係る問題を「本件体罰問題」という。)、体罰があったとされる平成三年一二月三日の状況及びその後の経過等について、校長がとりまとめたものである。

(二) 条例七条一号該当性

本件報告書には、個人の氏名、住所、生年月日等の戸籍的事項のほか、心身の状況(怪我の程度)、校長の本件教諭に対する評価、本件児童、本件教諭に関する発言内容等が全般にわたり関係者の個人名入りで詳細に記載されている。このように個人名が判明している情報についてはプライバシーの保護が強く要請されるものであり、本件報告書が、条例七条一号に規定する個人識別情報を含む公文書であることは明らかである。

殊に、本件体罰問題について、学校側及び品川区教育委員会(以下「教育委員会」という。)は体罰事故でないと判断しており、原告乙山及び本件児童と学校側との間で見解の食い違いが生じているところ、このような場合には、児童の健全な育成を期すという少年保護及び児童のプライバシー保護を最優先する必要があり、本件報告書は特に非公開とされるべき公文書である。

(三) 条例七条三号ア該当性

教育委員会は、教育に関する指導を的確に行うため、常日頃から学校に対し相互に情報交換を綿密にし、些細なことも報告するよう指導してきているところ、仮に本件報告書を公開した場合、本件児童、保護者及び本件教諭の私生活の平穏を害し、また、誤解が生じるなどの弊害をもたらし、その結果、八潮北小学校のみならず各学校と教育委員会との間にこれまで築かれていた信頼関係を維持できなくなるおそれが非常に大きく、この信頼関係が損なわれた場合、教育指導を必要とする問題に対する適正迅速な対応が困難となる。

のみならず、本件報告書は教育指導上の内部資料であり、公開を前提とした場合には、関係者は、本件児童やその保護者の感情等を慮って、本件児童にとって不快な話等を躊躇する可能性が大きくなる。現に、本件教諭は、原告乙山から、本件訴えが提起される直前まで、度重なる電話・葉書等による脅迫的な糾弾、中傷ビラの配付、罵詈雑言を浴びせられる等の嫌がらせを受け続けたのであって、本件報告書が公開された場合には、そのような弊害が継続、拡大することが予想されるほか、そうした弊害をおそれて、将来、同種の事務が形骸化する可能性があり、これを資料とした教育指導等の適正な執行が著しく妨げられるおそれがある。

したがって、本件報告書は、教育行政という区政執行に関する情報が記載された公文書であり、公開することにより教育行政の適正な執行を著しく妨げるおそれのあるものというべきであるから、条例七条三号アに規定する区政執行情報に該当する。

3  本件調書について

(一) 本件調書は、本件体罰問題に関して、平成四年二月初旬、教育委員会の若月秀夫指導主事(以下「若月主事」という。)が実施した事情聴取の際の本件児童及び本件教諭の話、関係保護者の話などをメモ的に記録したものである。

(二) 条例七条一号該当性

本件調書は、事情聴取の際の関係者の発言内容の記録という性格を有し、本件報告書と同じく個人の氏名、住所等の戸籍的事項が記載されているほか、関係者の本件教諭に対する意見、本件児童に関する話、校長の所見などが、関係者の個人名入りで詳細に記載されているものであり、本件報告書と同様、条例七条一号に規定する個人識別情報を含む公文書であることは明らかである。

(三) 条例七条三号ア該当性

本件調書は、児童・保護者と学校との間に体罰の有無につき見解の相違がある件について、若月主事が事情聴取した際の関係者の発言内容の記録という性格を有するものであり、このような事情聴取を円滑に行い得ることは適正な教育行政を執行するに当たり必要なことであって、仮に本件調書が公開された場合には、教育委員会と保護者、学校関係者との間の信頼関係が破壊され、今後、関係者からの事情聴取が困難になるおそれがある。

のみならず、本件報告書について主張したとおり、公開を前提とした場合には関係者が本件児童にとって不快な話等を躊躇する可能性があるほか、本件調書が公開された場合、本件教諭に対する嫌がらせなどの弊害が継続、拡大され、ひいては将来における同種事務が形骸化する可能性があり、教育指導等の適正な執行が著しく妨げられるおそれがある。

したがって、本件調書は、教育行政という区政執行に関する情報が記載された公文書であり、公開することにより教育行政の適正な執行を著しく妨げるおそれのあるものというべきであるから、条例七条三号アに規定する区政執行情報に該当する。

4(一)  ところで、児童・生徒に係る交通事故や問題行動があった場合の事故報告書や、教師による体罰行為があった場合の体罰報告書は、発生した事実を客観的に把握して作成されるものであることから、被告は、その公開請求について、特定個人を識別し得る個人情報部分を非公開としその余を公開する部分公開の取扱いをしている(これに対し、児童間の校内暴力報告書や性的被害報告書は、全面的に非公開としている。)。そして、体罰報告書中の加害教師の個人識別情報部分については、非公開にする利益より公開する利益を優先させるとの判断からこれを公開しており、また、体罰報告書中の区政執行情報部分についても、体罰行為という服務違反があった以上、条例七条本文にいう「公開できない合理的な理由」の有無の判断において、積極的に公開することの利益を優先させるべきものとして、これを公開することとしているものである。

(二)  しかし、本件文書は、体罰の有無について当事者双方の主張に決定的な差異があるため、これを客観的に確認することができずに作成されたものであって、この点で右体罰報告書等と異なり、公開できないものである。

また、本件文書は、前記のとおり非公開部分が大半であるため、公開部分と非公開部分を容易に分離できず、仮にプライバシー保護を徹底して部分公開したとしても、それでは原告らの公開請求の趣旨が失われると認められるし、そもそも原告らによる本件文書の公開請求は、いずれも本件文書を特定した請求となっており、仮に個人を識別し得る情報を非公開とする部分公開にしたとしても、本件児童のプライバシーを保護することにならないのであって、本件においては部分公開を認める余地がなく、本件文書全体を非公開とせざるを得ないのである。

5  以上のとおり、本件文書は、個人識別情報及び区政執行情報が記録されていることにより、公開できない合理的な理由があるから、これらを非公開とした本件決定はいずれも適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1は認める。

2  同2(一)の事実は不知、(二)及び(三)は争う。

3  同3(一)の事実は不知、(二)及び(三)は争う。

4  同4(一)の事実は不知、(二)は争う。

5  同5は争う。

五  原告らの反論

1  被告は、本件文書が個人識別情報を含む公文書で、その公開はプライバシーを侵害する旨主張するが、原告乙山及び本件児童は、本件文書の公開を求めているのであるから、本件に関する限りプライバシーを放棄しているものであり、また、公務員である本件教諭が公務として行った行為ないし言動は、そもそもプライバシーとはいえないし、その他の関係者の発言も、公的な場における発言である以上、プライバシーとして保護されるべき性質のものではないのであって、本件文書は、条例七条一号にいう「個人に関する情報」が記録されている公文書に当たらない。

2  条例七条一号の個人識別情報とは、個人の特定可能性のある全ての情報を意味するものではなく、それらの情報のうち、氏名・住所・親族関係等の戸籍的事項、学歴・家族構成等の経歴・生活関係、病歴等の心身状況、財産状況など、個人の私的生活を侵害するおそれのある個人生活に関する情報に限られると解すべきである。

現に、被告の運用においても、事故報告書や体罰報告書について、関係者の住所氏名等の戸籍的事項や経歴・生活関係の情報に限って非公開とされ、事故・体罰の内容や経過、学校側の対応、校長所見等はすべて公開されており(住所氏名等が非公開とされても、その事故・体罰の発生日時、学校名など公開された他の記載から当該児童を特定することが容易であることはいうまでもない。)、被告自身、単に個人の特定可能性(識別可能性)のある情報というだけで、非公開にするという解釈をとってはいないのであって、本件文書についても、事故報告書や体罰報告書と同様に、関係者の氏名住所等以外の記載については公開されなければならないというべきである。

3  条例七条により公文書を非公開とするためには、同条各号に該当する情報が記録されていることのほかに、「公開できない合理的な理由」が存することが必要であるが、本件においては、学校側が十分な調査をせず事実を解明しなかったために、原告乙山及び本件児童は、この事件による苦しみを現在もなお受けていることなどからすれば、本件文書を「公開できない合理的な理由」は全く存在しないというべきである。

4  条例七条三号アの「その他実施機関が行う事務事業に関する情報」は、例示された「入札の予定価格、試験問題、人事記録、争訟または交渉の方針」と同等の非公開とすべき高度の必要性を備えているものでなければならないと解すべきところ、本件において、そのような高度の必要性が具体的に存在することが客観的に明らかであるとはいえない。

被告は、本件文書を公開すると、誤解が生じるとか、学校と教育委員会との信頼関係が維持できなくなるとか、その後の事情聴取が困難になるなどと主張するが、被告のいう「誤解」とか「信頼関係」の具体的な意味は全く不明であるし、また、事情聴取の結果が公開されるからといって聴取に応じない関係者が出てくるおそれはないから、いずれも本件文書を非公開とする高度の必要性を基礎付けるものとはいえない。

第三  証拠 〔略〕

理由

一  請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

二  被告の主張1は当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。

1  原告乙山は、当時八潮北小学校の六学年に在学していた乙山春子(本件児童)の母であり、同女が平成三年一二月三日に同小学校内で鼻血を出したのは、本件教諭から体罰を受けたことが原因であるとして(本件体罰問題)、同じクラスの児童三名の保護者とともに、右体罰問題のほか本件教諭の日頃の言動に関して校長との話し合いを申し入れ、平成四年一月二四日、校長との話し合いがもたれた。

しかし、原告乙山ら保護者は、右話し合いの結果に納得せず、平成四年一月二九日、教育委員会に赴き、本件体罰問題を含め、本件教諭の日頃の言動や学校の対応について不満を訴えたほか、原告乙山は、同月三一日、品川区議会議員一名の立会のもとに、校長や本件教諭らと本件体罰問題について話し合いをしたが、体罰をしていないとする本件教諭の説明や学校側の対応に納得せず、解決をみなかった。

2  若月主事は、学校側と保護者との信頼関係ができていないと考え、関係保護者から事情を聴取するため、平成四年二月一日、八潮北小学校に赴いたところ、当日は、同小学校の会議室に、原告乙山及び他の保護者六、七名、校長、教頭のほか本件児童も出席し、最初に、本件児童から体罰があったとされる当日の状況についての説明がされ、その後、出席した保護者からこもごも本件教諭の日頃の教室での言動に対する批判や校長の対応を批判する発言がされた。

若月主事は、右事情聴取の結果等を踏まえて、改めて学校側の対応や本件教諭本人の話を聞く目的で、平成四年二月四日、笠原指導主事と一緒に八潮北小学校に出向き、校長、教頭らの同席のもとで、本件教諭から当日の状況等について事情を聴取したところ、本件教諭は、本件児童に対し暴行してはいないと述べ、同席していた校長や他の教諭も、本件教諭の話を事実として受け止めている旨述べた。

その後、若月主事は、平成四年二月一〇日、再び原告乙山ら保護者数名との話し合いの機会をもち、本件体罰問題や本件教諭の日頃の言動については当事者間で重要な部分に食い違いがあることなどを説明するとともに、保護者らに不信感を持たせたことは学校側として反省しなければならないことがある旨指摘し、また、同席した校長からは、本件教諭については、誤解を招くような言動のないように対応していきたいなどの発言がされた。また、同月二〇日に開かれた保護者の学年(六年生)全体会において、校長から、本件体罰問題に関するこれまでの経過の説明がされた。

3  本件調書は、右の平成四年二月一日の事情聴取の際の本件児童及び保護者らの発言と同月四日の事情聴取の際の本件教諭の反論ないし説明を、右両日とも同席していた八潮北小学校の教頭がメモし、本件児童、保護者らと本件教諭との具体的な発言を左右に対比させる体裁で作成されたものであって、その内容は、〈1〉 本件児童の鼻血について、〈2〉 その他について、〈3〉 担任の言動について、〈4〉 学校としての対応の四つの項目に分かれている。

そして、〈1〉の項目には、本件児童が鼻血を出した日時・場所や、当該日時の状況についての本件児童の話と本件教諭の話が氏名を明らかにして併記されているほか、関係教諭の話と校長所見が記載され、〈2〉の項目には、日頃の本件教諭の行動についての本件児童の話、日頃の本件児童の行動についての本件教諭の話及び校長所見が氏名を明らかにして記載され、〈3〉の項目には、本件教諭の日頃の言動についての保護者ら七名の話(各保護者ごとに児童の氏名と児童との続柄を明らかにして記録されている。)と、それに対する本件教諭の話が併記されているほか、本件教諭に対する評価等の校長所見が記載され、〈4〉の項目には、校長が本件教諭やその他の教諭に対し指導した内容のほか、これまでの事情聴取の日時や本件調書作成後の予定についての記載がされており、特に〈1〉と〈3〉の項目は、関係者の発言が各人ごとに詳細に記録されたものとなっている。

4  ところで、教育委員会においては、児童・生徒の身体、生命の危険にかかわるもの(家出、性的被害、自殺など)、当事者間で将来損害賠償等の問題の発生が予想されるもの(傷害など)、新聞・テレビ等の報道機関による報道が予想されるもの(対教師暴力など)など、児童・生徒の事故(問題行動)については、各学校長から教育長宛てに一定の書式にのっとった事故報告書を提出することとされており、教師の児童・生徒に対する体罰事故についても、同様に、体罰報告書を提出するものとされている。

校長は、原告乙山の訴えに係る体罰はないと判断したため、教育委員会に報告すべき場合に当たらないとして、本件体罰問題に関する報告書を作成していなかったが、本件教諭が、平成四年五月一四日に東京法務局人権擁護部から呼び出しを受けて、本件体罰問題について事情を聴取されたり、同年六月一〇日の東京新聞紙上で本件体罰問題についての報道がされたりしたことから、教育委員会は、校長に対し、本件体罰問題に関して報告書を提出するように指示し、これを受けて、平成四年六月二三日付けで、校長から教育長宛てに「体罰ではないかとの母親の訴えについて」と題する本件報告書が作成され、提出された。

本件報告書は、事故報告書と同様の体裁で作成されたものであり、〈1〉 件名、〈2〉 訴えの時期、〈3〉 関係保護者及び児童、〈4〉 主訴、〈5〉 鼻血の出た状況、〈6〉 その後の経過、〈7〉 校長所見の各項目に分かれ、〈3〉の項目には、保護者(原告乙山)の氏名・住所・電話番号や本件児童の氏名・学年・組・生年月日・続柄が、〈4〉の項目には、保護者(原告乙出)の訴えの内容が、〈5〉の項目には、校長がまとめた体罰があったとされる日の状況が本件児童及び本件教諭の氏名(及び教師歴)を明らかにして詳細に記載され、〈6〉の項目には、鼻血が出た日以後に行われた保護者(原告乙山)の指摘、話し合い、若月主事の調査、保護者らへの説明、保護者会について、校長がその各内容を保護者らの氏名や発言を含め短く要約したものが記載されているほか、原告乙山以外の他の保護者の発言や行動(氏名等の記載があるかどうかは、証拠上明らかでない。)とこれに対する本件教諭の対応等が記載され、〈7〉の項目には、保護者(原告乙山)の訴えについての校長の判断として体罰はなかったものと信じられる旨の記載及びその後の職員への指導方針などが記載されている。

右のとおり、本件報告書は、主として体罰があったとされる当日の状況とその後の保護者側を交えた話し合いの経過や学校側の対応を校長がとりまとめたものであり、その内容はいわば客観的な事実の報告がほとんどであって、それ以上に、本件教諭その他の関係者の思想、信条であるとか、私的な生活状況であるとか、学業成績あるいは勤務評価といった事柄が記載されているものとは認められない(被告は、校長の本件教諭に対する評価が記載されていると主張するが、本件全証拠によっても、そのような事実は認められない。)。

5  被告は、従前から、児童の交通事故に関する事故報告書や体罰報告書の公開請求に対しては、児童等の氏名等を除いて部分公開する取扱いをしているものであり、例えば、平成五年に品川区立清水台小学校長から教育長宛てに提出された交通事故による児童の死亡に関する事故報告書については、第三者からの公開請求に対し、被害児童、保護者、加害者等関係者氏名・住所等の記載と被害児童の出席状況・学校生活の様子・家庭環境等の記載を墨塗りしたうえで、事故の概要や事故の原因・背景・発生状況や学校の対応、校長所見などの記載をすべて公開している。また、平成四年に校長から教育長宛てに提出された体罰報告書二通についても、第三者からの公開請求に対し、いずれも当該児童とその保護者の氏名、住所、学年組、電話番号などの記載及び体罰行為をした教師以外の関係者(他の児童やその保護者等)の氏名等の記載と「関係児童について」という項目の記載内容が墨塗りされたうえで(体罰行為をした教師の氏名・教師歴等の記載は公開されている。)、体罰行為の概要、発生状況、学校の対応(保護者とのやり取りなど、関係者の発言内容も引用されて詳細に記載されている。)、校長所見等の記載がすべて公開されている(そのほか、平成六年に品川区立伊藤中学校長から教育長宛てに提出された体罰報告書についても、同様に一部を墨塗りされたうえで、当該生徒の当日の行動や保護者の発言などを含めた事実経過等の記載部分が公開されている。)。

以上のとおり認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  前示のとおり、条例七条は、「各号のいずれかに該当する情報が記録されていることにより、公開できない合理的な理由がある場合には、公文書の公開をしないことができる」とし、公文書の公開請求に対し、公開しないことができる公文書の範囲を定めているが、同条が、特に「・・・記録されていることにより、公開できない合理的な理由がある場合」と規定していることからすれば、公開しないことができる公文書の範囲について、単に形式的に各号所定の情報が記録されているというだけではなく、実質的にみても、各号所定の情報が記録されていることを理由に当該公文書の公開を拒否することに合理性があることを要求している趣旨と解するのが相当である。

そこで、まず本件報告書について、被告主張の非公開事由が認められるかどうかについて検討する。

1  条例七条一号該当性

(一)  条例七条一号は、個人識別情報が記録されているものを非公開文書の一つとして定めているところ、被告は、本件報告書は右個人識別情報に該当し、児童の健全育成を期すという少年保護及び児童のプライバシー保護を最優先して非公開とすべきである旨主張する。

(二)  確かに、前記認定のとおり、本件報告書は、体罰があったとされる当日の状況とその後の保護者側を交えた話し合いの経過や学校側の対応を校長が個人名を明らかにしてとりまとめたものであって、主として本件児童及び本件教諭に関する情報で、特定の個人を識別できる内容のものであることは明らかであり(条例七条一号の個人識別情報が、原告ら主張のように、個人生活に関する情報のみに限定されていると解すべき根拠はない。)、また、一般に、学校教育に関する情報については、人格形成の途上にある児童のプライバシー保護やその健全な育成を期するという少年保護の観点から、その公開の可否について慎重な配慮をすべきであることは、被告主張のとおりであるといえる。

したがって、本件児童と関係のない第三者からの公開請求に対し、本件児童の個人識別情報が記録されている本件報告書を公開することは、本件児童のプライバシー保護等の観点から相当でないことは明らかであり、本件児童が公開を承諾していると否とにかかわりなく(本人が公開を求めたいのであれば、後記のとおり本人から公開請求をすればよいのであって、本人の承諾を得て第三者が公開請求をすることを認める必要は全くない。)、条例七条一号の個人識別情報に該当することを理由にその公開を拒否することには合理性があると解するのが相当である。

そうすると、原告甲野の本件報告書の公開請求は、本件児童と関係のない第三者からの公開請求であるから、被告が、同原告に対し、条例七条一号に規定する非公開文書に該当するとして本件報告書を公開しなかったことは、適法であるというべきである。なお、(〔証拠略〕)によれば、原告甲野は、公開を求める公文書の内容を「八潮北小女教師による事件(校長報告書)」と特定して本件報告書の公開を請求したもので、本件体罰問題という特定の事件を認識したうえでの請求であり、本件報告書が原告乙山の子である本件児童に関する情報を記載した公文書であることを知って、その公開請求をしているものと認められるから、この場合には、たとえ本件報告書中の氏名・学年・組等の本件児童を識別し得る記載を墨塗りなどしたとしても、それによって本件児童のプライバシーを保護することにはならず、原告甲野が本件報告書の公開によって本件児童の個人情報を入手し得ることに変りがないことはいうまでもないから、原告甲野の本件報告書の公開請求について、本件児童の戸籍的事項を非公開とする部分公開を認める余地はないというべきである。また、本件報告書のうち本件児童の個人情報部分と本件教諭の個人情報部分とを明確に区分できると認めるべき事情は窺われないから、本件児童の個人情報部分について非公開事由が認められる以上、本件報告書の全体が非公開とされることはやむを得ないといわなければならない。

(三)  これに対し、(〔証拠略〕)によれば、条例は、「区民の知る権利を保障し、区民の区政への参加の機会の拡大、区民と区政との信頼関係の増進および一層民主的な区政運営の実現を図ることを目的」とし(一条)、実施機関は、右目的が「十分達成されるようにこの条例を解釈し、運用する」とともに、その解釈、運用に当たっては、「個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう個人の尊厳を守るための配慮をしなければならない」(三条一、二項)と規定していること、条例七条一号アないしウは、個人識別情報であっても、法令等により何人でも閲覧することができるものや公表することを目的として取得したものなど、秘密にすべき必要のないものについてはこれを公開することとしていることが認められ、これらの点からすると、条例七条一号が個人識別情報の記録されている文書を非公開としているのは、あくまでも公文書に記録された個人に関する情報が当該個人以外の者に公開されることにより、当該個人のプライバシー等の利益が侵害されることになることを考慮したものと解すべきであるから、個人識別情報が記録されている文書であっても、当該個人本人からの公開請求に対しては、特段の事情のない限り、同号に該当することを理由にその公開を拒否する必要性も合理性もないというべきであり、同号に基づいてその公開を拒否することはできないと解するのが相当である(なお、被告のいう児童プライバシー保護や少年保護の観点からの配慮も、本人(ないし親権者)からの公開請求に対しては、公開を拒否する合理的な理由とはなり得ないというべきである。)。

(四)  そうすると、原告乙山は本件児童の母であり、請求当時、本件児童は未だ中学一年生であって原告乙山の保護下にあったことなどからすれば、原告乙山の本件報告書の公開請求は、条例七条一号の適用の関係では、本件児童本人の公開請求と同視してよいということができるから、特段の事情の認められない本件においては、原告乙山の右公開請求に対しては、本件児童の個人情報部分に関する限り、条例七条一号に該当することを理由にその公開を拒否することはできないというべきである(なお、本件報告書中には、本件児童の個人情報部分のほか本件教諭の個人情報部分も記録されており、その両者が明確に区分できるとはいえないが、後記のとおり、本件教諭の個人情報部分も公開するのが相当であるから、右区分が困難であることは、原告乙山に対し、本件児童の個人情報部分の公開請求を拒否する理由とはならない。)。

(五)  次に、本件報告書中の本件教諭の個人情報部分についてみるに、被告が、体罰報告書の公開請求について、氏名や教師歴を含め体罰をした教師の個人情報をそのまま公開する取扱いをしていることは前記認定のとおりであるが、これは、被告が体罰報告書に記録された当該教師の個人情報については、その情報の性質、内容、公開による有用性などを考慮した結果、条例七条一号の解釈運用として、個人が識別されるものであっても公開することが相当であると判断していることによるものと窺われるのであって、被告の右のような解釈運用は、条例三条一項が「実施機関は、第一条の目的が十分に達成されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする」としていることや、七条本文が「公開できない合理的な理由がある場合」と規定して、各号所定の情報が記録されていることを理由に当該公文書の公開を拒否することに合理性があることを要求していることなどに照らし、十分に合理性を有するものとして、これを肯認することができる。

そうすると、前記認定したところからすれば、本件報告書は、教育委員会の指示に基づいて作成されたものではあるが、教師による体罰があったとの保護者の訴えについて、当日の状況とその後の経過や学校側の対応を校長がとりまとめて教育長宛てに報告したものであって、児童の事故(問題行動)について各学校長から教育長宛てに提出されることになっている事故報告書と同様の性格の公文書ということができるし、本件報告書における本件教諭の個人情報部分も、当日の状況や同教諭の言動という客観的な事実の報告が主たるものであって、私生活や勤務評価といった類いの事柄が含まれているわけではなく、体罰報告書の場合と実質的にそれほど異なるところがないと窺われるうえ(本件全証拠を検討しても、それらが実質的に著しく異なっていると認めるに足りる証拠はない。)、体罰があったのではないかとの保護者の訴えに関して、当日の状況やその後の経過をまとめた校長の報告書を当該保護者に公開することは、学校と保護者との信頼関係を醸成するうえで有用であると考えられることなどに照らすと、本件において、本件教諭の個人情報部分につき、体罰報告書の場合と別異に取扱うべき特段の理由は見当たらず、条例七条一号を根拠にこれを非公開とする合理的な理由に乏しいというべきである。

これに対し、被告は、本件報告書は体罰の有無に関して当事者間に食い違いがあり、客観的な事実を確認できずに作成された点で体罰報告書と異なる旨主張する。しかし、体罰報告書も本件報告書も、いずれも当該学校長がその概要等を教育長に報告するため作成した公文書であり、体罰があったかどうかが問題とされている場合において、当該教諭と当該児童との間に事実認識について見解の相違があろうとなかろうと、また、学校長が体罰の事実があったと判断して報告したものであろうとなかろうと、体罰の有無に関し学校長がとりまとめた事実の報告書という点で、文書の性質、目的、内容に実質的に異なるところはないのであって、被告の主張する点は、体罰報告書に関する前記の解釈運用に従って、本件報告書中の本件教諭の個人情報部分を原告乙山に公開することを認めることの妨げとなるものということはできない。

(六)  以上からすれば、結局、原告乙山からの本件報告書の公開請求については、本件児童及び本件教諭の個人識別情報が記録されていることにより、公開できない合理的な理由があるとは認められないというべきである。なお、前記認定したとおり、本件報告書中の「その後の経過」欄には、一部に原告乙山以外の他の保護者の氏名や発言の要約が記載されており、その部分はそれら保護者の個人情報としての面を有するものといえるが、その部分についてはその氏名を墨塗りなどにより非開示することによって、一応個人を識別できないことになるといえるから、この点は、原告乙山に対し本件報告書を公開することの妨げとはならないということができる(仮に原告乙山がそれらの保護者を特定、識別できることがあるとしても、それは原告乙山がそれらの保護者とともに、その場に出席し発言を聞いていたことによるものであって、原告乙山において、保護者らを特定、識別することにより、それらの保護者に関する何らかの新たな個人情報を取得することになるというものでないことは明らかであるから、本件においては、仮に原告乙山がそれらの保護者を特定、識別できることがあるとしても、そのことをもって条例七条一号を根拠に本件報告書の公開を拒否できる合理的な理由とはならないというべきである。)。

2  条例七条三号ア該当性

(一)  教育委員会は、品川区における教育行政を処理するために設置された執行機関であり、児童の事故等について学校長から報告を徴する事務は、教育委員会が実施機関となって行う事務事業であって、本件報告書は、教育行政という区政執行に関する情報が記録された公文書であるといえる。

(二)  被告は、本件報告書を公開すると、本件児童、保護者及び本件教諭の私生活の平穏を害したり、誤解が生じるなどの弊害をもたらし、学校と教育委員会との間に築かれていた信頼関係が維持できなくなる旨主張するが、その主張するところは、極めて抽象的であって、原告乙山に対する本件報告書の公開がなぜ本件児童、保護者及び本件教諭の私生活の平穏を害することになるのか、あるいはいかなる誤解を生むのかについて、何ら具体的な主張立証がない。

また、被告は、本件報告書を公開すると、原告乙山らの本件教諭に対する脅追的な糾弾や嫌がらせなどの弊害が継続、拡大することが予想される旨主張する。しかし、本件報告書が公開されると否とを問わず、本件教諭に対して脅迫や嫌がらせを行うことは、それ自体違法であって、決して許されることではないし、公文書の請求者が公開された公文書を用いて違法な行為に及ぶおそれがあるといえるような特段の事情がある場合には(本件において、そのような特段の事情が存在するとの主張立証はない。)、公開請求権の濫用としてこれを排斥する余地があるとしても、被告が主張するところは、本件報告書が区政執行情報に当たるとすることの根拠となるものではないというべきである。

なお、被告は、本件報告書を公開すると、本件教諭らは、本件児童やその保護者の感情等を慮り、本件児童にとって不快な話を躊躇する可能性が大きく、現在又は将来の同種の事務を形骸化するとも主張するが、既に認定したとおり、本件報告書は、本件体罰問題に関する保護者の訴えの内容、当日の状況、その後の経過及び学校側の対応等を校長が要約してとりまとめたものにすぎないのであるから、これが公開されたからといって、今後の同種事務が形骸化することになるとは到底考えられない。

(三)  以上のとおり、本件報告書は、教育行政に関する情報が記録されたものではあるが、これを公開することによって、教育行政の適正な執行に著しい支障が生じるとは考えられず、本件条例七条三号アの非公開文書に該当しないというべきである。

3  そうすると、本件報告書について、原告乙山の公開請求を拒否した被告の決定は違法であり、取消しを免れないが、原告甲野の公開請求について、本件条例七条一号に該当することを理由にこれを非公開とした被告の決定は、適法であるということができる。

四  次に、本件調書について、被告主張の非公開事由が認められるかどうかについて検討する。

1  前記認定のとおり、本件調書は、本件体罰問題に関し、若月主事が調査のため本件児童や原告乙山ほか数名の保護者ら及び本件教諭らから直接に事情を聴取したところをメモし、それぞれの供述をそのまま対比する形で詳細に記録したもので、右事情聴取はいずれも特定小人数の出席のもとに、その供述内容をそのまま公にするとの前提ではなく実施されたものであって、本件調書は、教育委員会の調査の過程において実施された関係者の供述録取書としての実質を有するものといえる。

前示のとおり、教育委員会は、品川区における教育行政を処理するために設置された執行機関であるが、教師による体罰があったかどうかをめぐって学校側と保護者側との間に争いがあるため、教育委員会として、適切な指導、助言をなし得るように、その事実関係等を調査し、関係者から事情聴取を行うことは、教育委員会が実施機関となって行う事務事業の一つであって、本件調査は、教育行政という区政執行に関する情報が記録された公文書であることは明らかである。

2  ところで、教育委員会が本件体罰問題のように学校側と保護者側との間で言い分に食い違いのある問題の解決のため適切な指導、助言を行うためには、それぞれの言い分を十分に聴取し、事実関係を的確に把握しなければならないことはいうまでもなく、その事情聴取が目的を十分に達成するためには、その性質上、聴取を受ける者が、自らの知見を関係者に遠慮することなくありのままに話せる状況が確保される必要があり、児童など関係者の人物評価や自己の意見などが率直に語られることが期待されているところ、このような事実関係等の調査の過程で作成された文書がそのまま公開されるとすれば、供述者がそのことを意識して忌憚のない意見等を述べることを避けるおそれがあるし、そもそも多数人から情報を収集するために行われる調査そのものが円滑かつ効果的に実施し得なくなるおそれも否定できないのであって、その結果、教育委員会として事実関係を的確に把握し、適切な指導、助言をなし得なくなるおそれがあるということができる。

3  そうすると、本件調書を公開した場合には、右のような事態を招くこととなり、ひいては教育委員会の行う教育行政の適正な執行を著しく妨げるおそれがあるということができるから、本件調書は、条例七条三号アに規定する区政執行情報が記録されていることにより、公開できない合理的な理由があると認めることができる。

原告らは、本件調書についてはこれを非公開とすべき高度の必要性がないし、また、公開できない合理的な理由も存在しない旨主張するが、本件調書を公開した場合に教育行政の執行上著しい支障が生じるおそれのあることは前記のとおりであって、原告らの右主張は採用することができない。

したがって、本件調書を非公開とした被告の各決定は、条例七条一号に該当するかどうかを検討するまでもなく、いずれも適法であるということができる。

五  以上の次第で、原告乙山の本件請求のうち、本件報告書の非公開決定の取消しを求める部分は理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、原告甲野の本件請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤久夫 裁判官 橋詰均 德岡治)

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